債務の前に「債権」の意味を理解しよう
債務を理解するにはまず「債権」の意味をしっかりと理解しておく必要があります。
なぜなら債務は債権があって初めて意味が生じる側面があるからです。
簡単に説明すると、債権とは特定の人に対して特定の行為もしくは給付を要求できる権利のことです。
「特定の行為や給付」には労働や金銭、物品などが含まれます。
たとえば契約に基づいたお金の貸し借りでは貸した人は相手に返済(金銭)を求める法的な権利(債権)があるので、お金を貸した人を債権者と言います。
債務整理のためにはこのくらいの理解で大丈夫ですが、債権はあくまで「契約」があることが前提で口約束では保証されないので注意が必要になります。
では「債務」とは何なのか
債権に対して「債務」とは特定の人(債権者)に対して特定の行為や給付をするべき義務があるということです。
つまり債務とは債権者の請求に応える法的な義務であると理解すればよいでしょう。
そしてこの義務がある人のことを専門用語で「債務者」と呼びます。
お金の貸し借りでは貸した人は金銭を要求する権利(債権)を持つ債権者で、借りた人は金銭を返す義務(債務)のある債務者であり、債権者と債務者の間に「▲年▲月▲日までにお金を返します」という契約があれば債務者は債権者に期日までに金銭を渡さなくてはいけません。
もちろん、債権同様に債務もお金のみならず特定の行為や物品が対象になることもあります。
債務があるのに果たせない「債務不履行」
さて、ここからはお金の貸し借りに限って債権と債務の説明を進めていきます。
たとえばAさんがB銀行でお金を借りた場合は、債権者はB銀行で債務者はAさんです。
そこで「AさんはB銀行に▲万円借りたので▲日までに返済します」といった内容で契約書を作成して契約を交わします。
ところがAさんは期日が過ぎてもB銀行にお金を返すことができなかった、つまり債務があるにも関わらずそれを果たしていない状態のことを「債務不履行」と言います。
この場合、もちろんB銀行は正当な権利としてAさんに借金の返済を要求できますし、AさんはB銀行に借金を返済する義務があります。
債務不履行になる前に債務整理をする
借金の場合は債務者が債権者に渡さなければいけないのは「金銭」です。
この金銭というのが法的に特殊で、たとえば借りた物なら紛失や破損のため相手に渡せなくなる「履行不能」が認められますが、金銭が社会からなくなることはないので借金には適用されません。
つまり、債務不履行であったとしても借金を返す義務(債務)は法的には遅延としか認識されず、債権者は延滞分の損害賠償を請求できます。
そこで大切なのが債務者は債務不履行になる前に借金を払える状況へ立て直すことなのですが、これを「債務整理」と言います。
債務整理にはいくつかの方法がありますが、どれが適当かは債務者の置かれた状況に左右されるため法律の知識がない人には難しい側面があります。
だからまず法律事務所や市の無料相談などで話を聞いてもらうことが、債務整理の第一歩となります。
債務整理の4つの方法、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産
最もデメリットの少ない任意整理
任意整理は裁判所を通さずに直接債権者(多くは金融業者)と交渉をして、将来利益や遅延損害金を免除してもらい、月々の支払額を減らす方法です。
大体のケースにおいて36回か60回払いで残債務(残りの借金)を支払っていくことになります。
将来利益とは今後返済を続けた場合にかかる利息のことで、遅延損害金とは返済期日が遅れたときに債権者から請求される賠償金のことです。
つまり任意整理のメリットは利息が免除されることにより、今後の返済を元本に直接充てることが可能になることでしょう。
ただし、個人で交渉しても受け入れられることが少ないので、弁護士に依頼することが前提になります。
自身で申し立てることができる特定調停
特定調停とは借金の支払いが難しくなった債務者が、簡易裁判所で調停員を通して債権者と話し合い返済計画を見直す方法です。
弁護士に依頼せずにできるのが特定調停の特徴で、そのためにうまくいけば費用をかなり抑えることができますし、手続きも簡単で処理のスピードも早いです。
また、過払い金があればそれを返済に充て直して元本を減らせる、取り立てが止まる、任意整理よりも債権者の合意を得やすい、強制執行を止めることができるなどのメリットがある一方で、交渉が難航すれば経費が任意整理を超えることがある、ブラックリストに載ってしまう、過払い金を返済に充てることはできても取り返すことはできない、未払利息や延滞損害金を支払わなければならないなどのデメリットもあります。
弁護士に一任できる任意整理とは異なり、自身が出廷しなくてはならないので時間がとられるのも特定調停のデメリットでしょう。
借金の大部分を免除できる個人再生
個人再生は裁判所を通して、すべての借金の内のいくらかを免除してもらった上で、残りを3年間かけて返済していくという方法です。
個人再生のメリットは借金を大幅に減らせることと家を処分しなくてもいいことで、ほとんどのケースで元の5分の1ほどの金額になりますが、住宅ローンを除く借金総額が5,000万円を超えていないことが条件になります。
個人再生のデメリットは正式な手続きのため債務者自身で行えないので、必ず弁護士の依頼が必要になることでしょう。
また複数の金融機関から借金がある場合全ての債権者が対象で、1つだけに個人再生を行うということは許されていません。
ですから会社や親族、友人にも借り入れがある場合はこれらの人々にも手続きに協力してもらうことになります。
また、住宅ローンは借金として認められません。
すべての借金を免除してもらう自己破産
自己破産は裁判所を通してすべての借金の返済を免除してもらう方法です。
ただし、すべての借金がなくなる代わりに個人で所有する資産を清算する必要も出てきます。
自己破産も個人再生と同じで債権者を平等に扱わなければいけないため、どれか一つの債権者に限ったり、逆に特定の債権者を省いて行うことができません。
また、借金はすべて自己破産でなくなるという考えはとても危険です。
なぜならギャンブルや浪費などが理由の借金は自己破産ができないからです。
ただし、任意整理と個人再生は借金の理由を問われることはありません。
自己破産は自身で行うことも弁護士に依頼することもどちらも可能ですが、弁護士に依頼した場合のデメリットは費用がかかること以外にないので、弁護士に依頼できるならそうした方がいいでしょう。