武富士の隆盛と法改正による倒産
かつてアコムやプロミスなど多くの消費者金融が乱立した中で、武富士は創業者である武井保雄の手腕によって最大手の名を欲しいままにしてきました。
しかし2006年に最高裁が法定金利以上の金利で貸し出しを行うグレーゾーン金利は違法だとする判決を出して以来、世の中は債務者に有利なように動き出します。
2009年にはグレーゾーン金利の抜け道であったみなし弁済が廃止され、翌2010年には出資法や貸金業法が改正、金利の上限は20%以上認められることはなくなりました。
またこのような動きの中で、「総量規制」が設けられ貸金業者は債務者の年収の3分の1を超えるお金を貸し付けることを禁止されます。
こうして貸金業者の利益が大幅に制限された中で、武富士はいわゆる「ブラック企業」と呼ばれるような内情が暴露され、2010年ついに倒産に追い込まれました。
武富士の過払い金に対する対応
グレーゾーン金利が撤廃された後、消費者金融からの借主には過払い金を請求する権利が生じました。
武富士においては過払い金に応じるべき人数が200万人、支払うべき過払い金は2兆円にも上ると言われましたが、ここで問題になったのが武富士の倒産です。
本来ならできる範囲で過払い金を支払うべきところを武富士は突然の倒産で自らの義務を放棄する形をとったのです。
この倒産は1000億以上の資産を息子に贈与するための計画倒産だとも噂されましたが、こうして武富士からの借主たちが正当な額の過払い金を手にする道が断たれてしまうことになったのです。
武富士の過払い金は全く支払われていないのか
過払い金は貸金業者が倒産していれば基本的に支払われることはなくなってしまいます。
実際に法律が改正されてから過払い金の請求が殺到し、倒産した貸金業者も多く存在します。
武富士のケースでは資産整理に当たった管財人が、法定金利で返済した場合の金額を計算し直して払い過ぎた金額を算出する「引き直し計算」を行い過払い金の請求に応じていました。
しかしやはり倒産した貸金業者から本来あるべき過払い金の返還がなされるはずがなく、実際の金額は過払い金総額の3.3%に過ぎませんでした。
また、過払い金請求に応じた期間も2012年1月から10月までのおよそ9か月程度と短期間であり、受け付けは2011年2月に締め切られたため、現在武富士に対して過払い金を請求することは不可能です。
回収困難な過払い金と完全に姿を消した武富士
武富士は倒産後完全に消滅したわけではなく、日本保証に過払い金が生じない債務者を中心に貸金業を譲りましたが、経営状況が思わしくなかったため2013年には完全に貸金業から手を引いています。
もちろん、多額の過払い金が生じたであろう請求者たちがそれで納得するはずもなく、日本各地で訴訟が行われていましたが、勝訴の判例は大阪地裁の1件のみでほとんどの請求者は過払い金を手にすることなく終わっています。
このような現状を考慮すると、武富士から過払い金を返還してもらうことはほぼ不可能だと言えるでしょう。
そして旧武富士株式会社であるTFK株式会社は2017年2月に完全に解散し、武富士は全身であった富士商事の時代を含めたおよそ50年の歴史に幕を下ろしたのです。